パワースポットとして人気のある下鴨神社。上賀茂神社と並び、京都最古として知られ世界文化遺産に登録されています。また、いのしし神社と呼ばれる護王神社は、ランナーがよく参拝にくるそうです。
これら神社をはじめとする日本全国にある神社仏閣。厳かなる空間でも罪を犯す人間がいます。
モラルが欠けた犯罪者、マナーを守らない参拝者
2019年3月、平成も終わりに近づいてきました。今上天皇陛下が退位され新元号としてスタートします。伊勢神宮などで奉幣(ほうべい)の儀がとり行われるなど、皇室によるさまざまな報道を目にする人も多いことでしょう。
神宮やお寺など、由緒ある神社仏閣へ御朱印巡りをする人のかずも増えました。
御朱印が可愛いと人気の寺院、パワースポットと呼ばれる神社など、さまざまな目的をもち多くの人々が神社仏閣に足を運んでいると話題となっています。その一方で、マナーを守らないで参拝する人が問題としてあげられます。国の重要文化財に千社札を貼ってしまうというトラブルも多く、参拝に制限をかける神社仏閣も増えました。
日本では「神様のバチが当たる」「天罰が下る」などという言葉があるように、崇高な空間である神社やお寺は、犯罪を起こしにくいというのが暗黙の了解でした。また昔は、地域社会のつながりが強かったことも理由としてあげられます。そういった点から、神社やお寺では防犯意識を持つ必要はありませんでした。
ですが、平成から令和へと変わる現代社会においては、このような性善説では通用しないのが現状。インターネットが普及して膨大な情報が行き交うようになり、神具や仏具、仏像などが高値で売買されてしまうのです。
そして、情報化社会におけるもう1つの問題。それは参拝者のマナーです。
正しい参拝方法を知らない人、川へ賽銭を投げ入れる人、千社札を無許可で貼ってしまう人、ご神木に抱きついて根を傷つけてしまう人―――。それらの多くは、SNS上で映える写真を公開したいがためだったり、◯◯をすればご利益が上がるという根拠のない噂話に乗ってしまうのが理由としてあげられます。
神社仏閣に忍び寄る犯罪行為
神社やお寺へ参拝に行くと、生い茂る木々の香りが感じられ、静寂に包まれた雰囲気の中で、心身ともにリフレッシュできるでしょう。ですがそのような崇高な場所でも犯罪が発生することも多々あります。
神社やお寺が犯罪被害に遭った実際の事件をみていきましょう。
[box class="yellow_box" title="ご神木が薬剤で枯らされる被害"]
2011年から2012年にかけて、四国を中心に神社のご神木が何者かに除草剤を挿入されました。
樹齢500年以上の立派なヒノキの大木など、ドリルで穴を開け薬剤を注入したのだそう。犯行の動機は営利目的だといわれています。
何百年ともその地域を見守り続けてきた神木を、利益のために枯らすとは、何とも罰当たりな犯罪です。
また、一般住宅や会社よりは少ないものの、侵入窃盗被害も多いといわれています。
盗むものは、賽銭、絵馬やおみくじの売上金などの現金が中心ですが、仏像、神棚、しめ縄、神輿の金具などの神具や仏具なども被害にあっています。
神棚、しめ縄などの神具は工芸品・美術品としてほとんどが海外に転売され、回収が極めて困難になります。[/aside]
また、金属品はスクラップ買取り業者に転売され犯人が逮捕されても既に加工されている可能性もあります。貴重な文化品がこのような被害に遭うのは、何とも悲しいものです。[/box]
[box class="yellow_box" title="外交問題に発展した重要文化財の盗難事件"]
時として重要文化財の盗難事件も起きており、文化保存の観点からも大きな問題になっています。
有名になったのは、長崎県対馬市の海神神社から重要文化財(国指定)である銅造如来立像が盗まれ、韓国で発見された事件。この事件は、日韓の間で外交問題にすらなりました。[/box]
[box class="yellow_box" title="各地で相次いだ神社への放火"]
凶悪な犯罪としては、2013年10月に静岡県で発生した、2日連続で神社が放火され全焼した事件をはじめとして、各地で相次いだ神社への放火です。
神社仏閣の犯罪被害は広範に渡り、また、時として文化的な意味でも大きな損害を被ることがあります。[/box]
神社やお寺は、深夜になるにつれ人通りもなく、ひっそりと静まり返ります。木や高い塀などに囲まれている神社仏閣も多いことでしょう。このような環境が、侵入窃盗するには逃げ隠れできやすい絶好のスポットとなるのです。
神社仏閣は、国民の誰もが自由に出入りできる開かれた場所。ですが、それと同時に犯罪者も容易に出入りできる場所となるので厄介な問題です。
海外で高額な取引をされる神具や仏具、仏像
お寺へ侵入し、仏像などを盗む「窃盗」は26.2%、仏像などを壊してしまう「器物損壊」は65.5%にも上ります。(平成25年警察庁統計資料より)
盗むのは賽銭?
日本の仏像などは、盗んだ人間に本当の価値がわからなくても海外では高値で売買できるといいます。そのようなルートで換金するのが神社仏閣へ侵入窃盗する大きな狙い。
神社やお寺、このような崇高な場所でも罪を犯す人間がいるのは悲しきことです。ですが、時代とともに防犯対策を見直すことも大切ではないでしょうか?
神社仏閣がとれる防犯対策とは
文明の利器が地球上にさまざまな変化をもたらしました。いまや誰もがスマホを持ち歩く時代。世界中どこにいてもインターネットで交流が持てます。コンピューター制御で走行する自動車はブレーキも自動的にかかり、冷蔵庫、洗濯機、テレビと三種の神器と呼ばれた家電製品も、最新のテクノロジーが搭載された新商品が次々と発売されます。
便利な世の中ですが、それらを悪用する人間が増え、犯罪が多様化したのも事実。寺院仏閣にもしっかりとした防犯が必要です。ですが、ひっそりと静まった空間だからといって、24時間ライトを照らしておくわけにもいきません。そういった点から次にあげる防犯システムは有効に働きます。
防犯カメラ
もし、犯罪者が下見で防犯カメラがあるのを知れば、少なからず警戒するでしょう。防犯カメラは、犯罪現場を撮影すると同時に、犯罪者に強い犯罪抑止力効果を与えます。
室内侵入検出器
防犯カメラがあっても、念入りに準備をして侵入を試みる泥棒も存在します。そのような犯罪に対しては、室内侵入検出器が有効です。
室内侵入検出器とは、センサーで人の動きを感知し、ベルなどの通報装置を起動させる機器です。通報装置が作動されると、その音に驚き大抵の不法侵入者は逃げていくでしょう。また、誰もいない無人の神社仏閣でも、迅速に犯罪が起きていることを周囲に知らせることができます。
炎センサー
神社は大半が木造で、放火に脆弱です。火の熱や光を感知すると異常を知らせる炎センサーは、初期段階で消火するためには不可欠といえます。放火でなくとも、火の不始末での火災も防止できるのが利点です。
日本文化を守るのは防犯意識
歴史を感じさせる場所に現代の機械を設置することに違和感を持つ人も少なくないでしょう。また、参拝客に失礼という意見もあるかもしれません。
ですが、誰が参拝客であり、誰が犯罪者になるのかは見分けがつきません。一見普通の参拝者だと見えても、罪を犯す人間である可能性は十分にあります。
防犯システムを導入している神社やお寺は増えつつあります。神社仏閣は古き良き大切な日本文化です。崇高な空間、神具や仏具を守るためにも、しっかりした防犯意識をもたなければいけない時代となったのです。