誰かが勝手に家に入ってきたら―――。不意にくるかもしれない不法侵入に恐怖を覚える人は多いといいます。盗聴器やストーカー行為、ニュースでも時おり目にするのではないでしょうか?ゴミ屋敷や敷地の境界線など、近隣住民同士のトラブルから発生する不法侵入問題も多々あるのが現状です。
ここでは、不法侵入の定義について考えてみましょう。
「どこからが不法侵入!?」刑法の判断基準
不法侵入とひとえにいっても、さまざまな観点やトラブルの内容から断言できるものではありません。
人の考えは十人十色。不法侵入されたと思っていても、実は違うということは考えられます。その逆もまた然りです。
もっとも泥棒や窃盗の類なら立派な犯罪(注:不法侵入とは別な法律で裁かれることから、厳密に言えば不法侵入には該当しないとも考えれます)。ですが不法侵入は、広範囲に渡り適用される犯罪行為です。そういった点から、自分が知らぬうちに不法侵入として訴えられる可能性だって十分にありえるのです。
刑法では、不法侵入という言葉自体はありません。それに該当するものは刑法13章第130条に規定されています。
「(住居侵入等)第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」
すこし砕けた表現でいうと、勝手に他人の自宅へ入ったり、建物の所有者が退去するように話しても居座った場合は逮捕できるということです。
不法侵入が適用されるケースとは
ですが、正当な理由といっても、逮捕に値するのかが分からないという人もいるのではないでしょうか?
被害が発生して警察に駆け込んでも、すぐ逮捕に結びつくかが分からない。その間に被害を受けるかもしれない。もしかしたら通報したことにより、報復をうける可能性も…。考えるとキリがありません。
刑法で表現される「正当な理由」。これは専門家ではない限り、その定義をはっきりと示すのは難しいものです。仮に戸建て住宅として、お隣の敷地との境界線が曖昧なものだとしたら、他人同士でもご近所という密な関係であるだけに厄介な問題。
例えば、塀を構えていた李杭を打ち込んでいるなら、地積測量図を紛失してしまっても不動産登記を調べなくても判別つくでしょう。ですが、土地は代々相続するという家庭も少なくありません。
土地を購入した当時に交わした約束でも、はっきりとした記録がない限りは、子孫いう第三者間でのトラブルに発展する恐れも生じます。時にはそれが痛ましい事件に発展することも悲しい事実です。
ではここで、実際にトラブルになったケースをみていきましょう。
ケース1 勝手にチラシを配るのは不法侵入?
チラシを勝手に郵便ポストに入れる行為、これは不法侵入に該当するのでしょうか?
これを考えるには、まずは刑法における敷地の範囲について考えてみましょう。
過去の裁判事例では、このような有罪判決がありました。「外側とあきらかに区別された場所(囲繞地)へ許可なく侵入することは有罪。」
つまり、住宅のみならず庭や玄関先に勝手に入ることは犯罪にあたります。また、上記のケースではチラシ投函を拒否することを提示しています。そのうえで広告等を入れる行為は、持ち主の意思に反して不快感を与えると判断され、裁判では被害を訴えたほうが有利になると考えられます。
ですが、マンションのような集合住宅では判断が複雑になり、共用スペースにある集合ポストにチラシを入れる行為を違法にあたるか合法とされるのかという基準は今のところ存在しません。
ただし、風俗系の広告(いわゆるピンクチラシ)については、迷惑防止条例や風俗営業法で禁止されているため、配布者は刑事罰の対象となります。
ケース2 空き地に自転車を停めるのは不法侵入?
結論から言うと、これは不法侵入になる可能性が高いといえます。
刑法13章第130条の「人の住居若しくは人の看守する邸宅」の部分は、もちろん住宅内ではなく敷地内ということ。万が一、土地の所有者に訴えられた場合は、高い確立で有罪になるでしょう。
数ヶ月にわたって不法に駐輪所として使い続ける、またゴミを捨てるなどという行為が続いたため逮捕されたという事例もありますので、悪気ない行為かもしれませんが、くれぐれもご注意ください。
ケース3 駐車場や畑を近道として通ると不法侵入?
急いでいる時は、さまざまなルートを駆使して近道をしたくなるもの。時には駐車場や他人の所有する畑を通ってショートカットを図ったという覚えのある人もいるのではないしょうか?
このケースでは、不法侵入には当たらないと考えられますが、軽犯罪法で軽微な罰が与えられる可能性があります。
このように、日常で何気なくやっていることでも、不法行為として処罰されることがあるので注意しましょう。
不法侵入対策の防犯商品について
不法侵入という行為を知ってか知らずか行ってしまう側にとっては小さなことかもしれませんが、被害を受けたほうにしてみたらさまざまなダメージを負っていることは十分に考えられます。
例えば、
- 隣人が土地の境界線辺りにゴミを置いているが自分の敷地にはみ出している
- 自分の所有している空き地が、夜間に勝手に駐車されている
- 代々受け継いでいる山に生えている筍や松茸、山菜などを採りにくる人が絶えない
このようなケースでは充分に不法侵入として訴えることが出来るのですが、警察を動かすためには、証拠が必要になります。
そういった点から考えると、防犯カメラを必要な箇所に設置することは非常に有効です。証拠映像にならなくても、人はカメラで見られてるということに対して意識する生き物です。不法侵入になる前の抑止力にもつながるでしょう。近年の防犯カメラは、安価な製品でも種類が多く、性能が高いものが数多くあります。
防犯カメラをつけることに抵抗がある人もいるかと思います。ですが、不法侵入でトラブルに発展すると、とても労力を使うものです。無用な疲労を避けるためにも、防犯カメラの活用は有効的に働くでしょう。